王智飛個展「電子の方舟」
Tue, Jan 06
|Moon Gallery浅草分館


Time & Location
Jan 06, 2026, 9:00 AM GMT+9 – Jan 11, 2026, 8:00 PM GMT+9
Moon Gallery浅草分館, 2-chōme-35-14 Asakusa, Taito City, Tokyo 111-0032, Japan
About the event
電子の方舟
「方舟」という語は、インド神話における大洪水の物語に由来する。伝説では、摩奴が巨大な船を築き、滅びの淵にあった生命を救い出し、人間・動物・植物の系譜を未来へとつなげた。
現代の私にとって、この「方舟」は神話的な原型であると同時に、「いかにしてイメージが保存され得るのか」という比喩でもある。インターネットという奔流の中で、私は絵画という行為を通して、押し流され、忘却され、無数の複製の果てに軽さを帯びてしまったイメージを、再び掬い上げようとしている。
本展では、近年の制作を一望できる。
学部時代に取り組んだ、インターネット上のゲーム IP を水墨で再解釈する試み。写意的人物表現への探究。そして近年、岩彩を用いた動物イメージの制作へと移行した現在。
これらの題材は一見何の関連もないように見える。しかし共通しているのは、どれもインターネットから拾い上げたものであり、漂流し、断片化し、消費の速度の中で本来の意味を失いつつある「デジタル生命」であるという点だ。
それらをネットワークから切り取り、紙の上に置き直し、墨や岩彩で描き写すとき、イメージは元の文脈から離れ、抽象化され、見慣れたものが異質なものとして立ち上がる。
かつてはクリックされ、スクロールされ、一瞬だけ視線をかすめた存在が、絵画の中ではゆっくりと見つめ直され、重みを与えられ、より長い時間の中へと定着していく。
私が関心を持つのは「現実を再現すること」ではない。イメージが本来の場所を離れたとき、そこに別の生命が生まれ得るのかどうか。
画面の片隅に映り込んだ存在は、より柔らかく、より本質的な眼差しの中に置き換えられるのだろうか。
絶えず移動し、変容し続けるこれらのイメージの間には、ひとつの隠れた流れが走っている。私は絵画を通して、それらに現実の時間から切り離された「永遠の場所」を与えたいと願っている。
絵画は、現代におけるひとつの方舟であり、私はその舵を取る者である。
か弱いイメージであっても、私の作品の中で生き永らえることを望んでいる。
インターネット時代の情報の洪水が止むことはない。
それでも、この小さな方舟の中で、いくつかのイメージが岸に辿り着き、静かに沈殿し、記憶として留まることを願っている。
