Moon Q個展「ぴいちくぱあちく--科学と芸術の出会い、自然との十年の対話」
Wed, Aug 27
|Taito City


Time & Location
Aug 27, 2025, 1:00 PM GMT+9 – Aug 31, 2025, 7:00 PM GMT+9
Taito City, 上野ダイカンプラザ 1F, 2-chōme-3-13 Kitaueno, Taito City, Tokyo 110-0014, Japan
About the event
アーティストについて
Moon Q(本名:裘夢雲)は、中国杭州市出身のサイエンスイラストレーター、芸術学博士(日本大学)。日本大学研究員、手作り科学館Exedra契約イラストレーター・デザイナー、自然体験活動指導者(NEAL Leader)としても活動しています。
2015年より、中国の野生鳥類図鑑や自然博物館・自然保護区の解説図など、数多くのサイエンスイラストプロジェクトに参加しています。代表作「ヤンバルクイナの生態」シリーズは二度の国際コンペで最高賞を受賞し、2025年にはJIA日本イラストレーション大賞の審査員も務めています。2022年に日本大学大学院芸術学研究科修士課程を修了し、2025年には同研究科にて博士号を取得し、研究成果「ナチュラルサイエンスイラストレーションver0.0.1」を公開しました。
Moon Qは、サイエンスイラストレーターとしての道を歩み始めてから10年:2015年9月1日に『中国鳥類観察ハンドブック』のイラストレーターとして活動をスタートさせて以来、中国での仕事、国営企業の退職、日本への留学、そして博士号取得まで、数えきれない経験を重ねてきました。一見順調に見えるこの10年の裏には、創作の孤独や試行錯誤もありました。
ナチュラルサイエンスイラストレーション(Natural Science Illustration)とは、科学的な情報を伝える視覚的な手段(特にイラスト・絵画)です。サイエンスイラストは「美しく」あるだけでなく、正確でなければなりません。描かれる動植物、化石、地形、その他の自然現象は、すべて科学的事実に基づく必要があります。博物館の展示、科学普及書、野外調査報告、種の図鑑など、さまざまな場面で活用されています。目の前にあるものだけを描くのではなく、化石や標本、文献、写真、口述資料などをもとに、目には見えない自然の姿――たとえば古生物や絶滅危惧種の生態環境――を再現することもあります。
次の道へ進むため、そして原点を見つめ直すために開催している初の個展「ぴいちくぱあちく」では、これまで関わったサイエンスイラストのプロジェクトや代表作を展示します。本展は、この10年間の集大成が来場者を迎えます。
サイエンスイラスト(ナチュラルサイエンスイラストレーション)
ナチュラルサイエンスイラストレーション(Natural Science Illustration)とは、科学的な情報を伝える視覚的な手段です(特にイラスト・絵画)。サイエンスイラストは「美しく」あるだけでなく、正確でなければなりません。描かれる動植物、化石、地形、その他の自然現象は、すべて科学的事実に基づく必要があります。博物館の展示、科学普及書、野外調査報告、種の図鑑など、さまざまな場面で活用されています。目の前にあるものだけを描くのではなく、化石や標本、文献、写真、口述資料などをもとに、目には見えない自然の姿――たとえば古生物や絶滅危惧種の生態環境――を再現することもあります。
私のサイエンスイラストレーターの道
10年続けてきたことには、少なからず感慨や収穫があるものです。2015年9月1日、私は正式に『中国鳥類観察ハンドブック』のイラストレーターとしての活動をスタートさせました。そして今年9月、サイエンスイラストレーターとしての11年目を迎えます。
この10年を振り返ると、初めてのイラストの仕事から、国営企業の退職、日本への留学、そして芸術学博士号の取得まで、数え切れない出来事がありました。その間に制作した代表作「ヤンバルクイナの生態」シリーズは、2つの国際コンペで最高賞を受賞しました。さらに今年はJIA日本イラストレーション大賞の審査員にも招かれました。
順風満帆に見える10年でしたが、その裏には語り尽くせない苦労と創作の孤独がありました。そろそろ原点に立ち返り、次の道へ進むために心の荷物を整理したい――そう思い、この10年の最後の一週間(8/27~8/31)に、初の個展「ぴいちくぱあちく」を企画しました。本展では、これまで関わったサイエンスイラストのプロジェクトや代表作を展示します。
2015年9月~2018年8月|イラストという副業2015年9月、私は初めてのサイエンスイラストの仕事を受けました。それは『中国野生鳥類シリーズ』および『中国鳥類観察ハンドブック』の図鑑絵の制作でした。中国には約1500種の鳥が生息しており、10名以上のイラストレーターからなるチームであっても、全ての図版を完成させるには数年を要しました。私はその中で、グンカンドリ科、カツオドリ科、ウ科、ハゲワシ属、オグロシギ、オオハシシギ属、トウゾクカモメ科、ヒロハシ科、ムクドリ科を担当しました。


鳥類図鑑の制作期間中、いくつかの別プロジェクトにも携わりました。最も早いものは、浙江山野(自然教育施設)発行の2016年カレンダー『杭州の街路樹』と2017年カレンダー『浙江で最も美しい野花』に収録されたボタニカルイラストです。





その他、深圳紅樹林自然保護区の屋外案内板イラストや、浙江自然博物館安吉館展示の解説図なども手がけました。




国営企業に勤めていたこの数年間、自然教育機関の活動に参加する機会が多く、自然好きな多くの友人と出会いました。彼らはイラストの需要があると、いつも私を思い出して声をかけてくれ、それが当時副業イラストレーターだった私にとって大きな励みとなりました。
こうした小さな積み重ねがきっかけで、2017年3月、北京で行われた曾孝濂先生のサイエンスイラスト(博物画)研修クラスに参加することができました。この経験は、自分が本当にやりたいことを一層確信させ、胸の中の小さな炎はさらに強く燃え上がりました。
2018年8月~2020年3月|退職と留学準備
2018年8月、思い切って会社を退職し、日本留学のためのポートフォリオ制作を始めました。ポートフォリオは主にナチュラルサイエンスをテーマに構成し、その中の飛び出す絵本『洱海』も今回の個展で展示いたします。


2020年4月~2025年3月|思考・創作・研究
2020年4月、日本大学大学院芸術学研究科に進学し、木村政司教授と森香織教授の指導を受けました。木村教授は、日本における「サイエンティフィックイラストレーション」という概念の導入者であり、米国スミソニアン国立自然史博物館で専任イラストレーターとして勤務した経歴を持ちます。
留学を選んだ理由の一つは、科学画への理解をより深めたいと考えたからです。これまで私の制作は図鑑用のサイエンスイラストが中心でしたが、生物は周囲の環境と密接に結びついており、環境描写の重要性を感じていました。当時の私は環境表現を不得手としており、その課題を克服したいという思いもありました。
修士課程の制作テーマには、鳥類の生態画(生態学分野のサイエンスイラスト)を選びました。調査の中で、沖縄本島に飛べない鳥「ヤンバルクイナ」が生息していることを知りました。1981年に新種として発表されたこの鳥は、発見の遅さから全国的に注目されましたが、その直後に絶滅危惧種に指定され、個体数は急減しました。私はその現状を生態画として表現することで、より多くの人に知ってもらいたいと考えました。
制作にあたり、琉球大学生態学研究室の小林峻助教と、長年野生動物保護に携わる獣医師・中谷裕美子氏に監修を依頼。約1年半かけて7点の作品(孵卵、休息、歩行、水浴の各行動を描いた生態画4点、卵と巣1点、骨格図2点)を完成させました。



このシリーズにより、2023年中国野生生物映像大賞(CWIVC)自然絵画部門「年間ナチュラルアーティスト」および「成人・野生動物カテゴリ チャンピオン」を受賞。翌2024年にはJIA日本イラストレーション大賞にてグランプリを受賞しました。
修士課程修了後、博士課程に進学。サイエンスイラストの理論的研究を深め、日本全国の自然史博物館を巡り、その活用実態を調査・分析しました。博論「ナチュラルサイエンスイラストレーションの制作に関する研究:自然史博物館における応用実態を通して」の成果として「ナチュラルサイエンスイラストレーション制作ガイドライン ver.0.0.1」を発行しました(https://nihon-u.repo.nii.ac.jp/records/2002595)。

2024年初頭、鳥類学者であり浙江省博物館館長(元・浙江自然博物館副館長)の陳水華先生より、鳥類普及書の挿絵制作依頼を受け、博士論文執筆中ながら担当を決意。本書は現在まだ出版準備中ですが、本個展では30点以上の原画を展示します。

2025年3月、博士(芸術学)学位を取得し、日本大学学術・文化部門学長賞(全学で1名)を受賞。学生生活に一区切りをつけました。
2025年4月~|フリランスのサイエンスイラストレーター+スラッシュキャリア
過去を振り返れば、多くの賞や称号をいただき、自分の中にも多くの肩書きがありました(サイエンスイラスト、研究員、グラフィックデザイナー、自然保護、サイエンスイラストの普及、科学教育、環境教育…)。しかし、絵描きとしては、もっと多くの作品を創りたい。そして自然を愛する者としては、その作品を通して少しでも自然に恩返しがしたい。これからの目標は、曖昧でありながらも、どこかはっきりしています。こつこつ、ゆっくり。
アーティスト紹介
Moon Q
本名裘夢雲、中国杭州市出身。Ph.D(Art)。【サイエンスイラストレーター、日本大学研究員、手作り科学館Exedra契約イラストレーター・デザイナー、自然体験活動指導者(NEAL Leader)】
2015年より、中国の野生鳥類シリーズの図鑑絵や、自然博物館および自然保護区の解説図など、数多くのイラストプロジェクトに参加した。
2022年に日本大学大学院芸術学研究科を修了し、修士学位(芸術学)を取得。2025年に同研究科において、芸術学博士学位(芸術学)を取得し、研究成果「ナチュラルサイエンスイラストレーションver0.0.1」を公開した。
国際コンペティション受賞歴2023 中国野生生物映像コンテスト(CWIVC) 自然絵画部門「年間ナチュラルアーティスト」2023 中国野生生物映像コンテスト(CWIVC) 自然絵画部門 成人・野生動物カテゴリ「チャンピオン」2024 JIA日本イラストレーション公募賞 グランプリ
所属学会・協会日本生態学会/日本デザイン学会/日本サイエンスコミュニケーション協会/日本イラストレーター協会/日本絵本学会/沖縄生物学会
HP https://moonillustration.myportfolio.com/
Email cakepizza661@gmail.com
researchmap https://researchmap.jp/Moon_Q